「願うと叶う」というほど世界は甘くなかった <完結>

「引き寄せの法則」というものに期待しすぎた少年が体験する、ちょっとした不思議話。 一応、ファンタジー? 運を良くしたい人必見・・・・というほどでもないか。

2013年11月


一話はこちらから  http://negaama.blog.jp/archives/cat_89315.html


<その3>


「お前だれ?」



「お前とはご挨拶じゃな。いつもこの部屋におったのに気づかなんだかな?」



「部屋にいた?お前みたいなのしらんぞ」



「やっと目が開いたから、わしの姿が見えるようになったのじゃ。」



なんだ、この話し方は。痛い中学生かいな?



「で、君はだれ。なんでこんなとこで人の部屋にいるんだ?」



「ぬしはわしのセリフを聞いておらなんだか。前からおったのじゃ」



「いつ?」



3ヶ月前かの」



「どこに?」



「これ」



と言って指差すのは御神木で作られたと言われるテーブル



「確かに、それ霊能者から買ったのは3ヶ月まえだが。それとお前関係ないだろう」



「はぁ?ぬしが買ったからわしがここにおるのじゃ」



「わけわからんな、なんのことだ?」



「ぬしは前から頭が悪そうだと思っておったが。まだわからぬのか。まあよい、説明してやるからそこに直れ」



と言って、そのケモ耳少女は俺をベッドの上に座るよう指示する。



って、

「ここ俺の部屋じゃん」



「細かいことは気にするな」



この妙にでかい態度はなんなんだ?



で、そのケモ耳少女の話すには。



簡単に言うと、このちゃぶ台の材料になった御神木に宿る狐だそうで。



「そとで気ままに人などをだまくらかして遊んでおったら、気がつくとなんぞえらい坊さんに御神木に封じ込められてしもうて。そのまま数百年経ってしもうたか。気がつくと、この家に来ておった」



「なんで、俺の家に来たんだよ」



「ぬしがこれを買ったからじゃ」



「だって、御神木使ってこのテーブル一つだけ作ったわけじゃないだろう。ほかのところ行けばいいじゃないか」



「うむ、ぬしはあながちアホではないな。御神木はそのまま、神社の遷宮の際に使われておって、その端材で作られたのがこの机じゃ。じゃから、大部分は神社の柱になっておるよ」



「で、なんでこの端材にくるのさ」



「ぬしがわしを召喚したからじゃ」



「召喚?」



「ここにぬしが集めた様々なものがあるじゃろう。

まったく、よくこれだけのものを集めたものじゃと感心するが。それがわしを呼び寄せた」



「呼び寄せたって、だいたいこれは俺の彼女を引き寄せるためのアイテムたちだ。お前みたいなケモ耳少女を呼び出すためじゃない」



「ぬしは女と付き合いたいのであろう?」



「そうだよ、それでこれだけアイテムを揃えたんだ。両親からもらった、一人暮らし用の、ここ数ヶ月分の生活費をつぎ込んでいるから昼飯以外はほぼパンの耳しか食ってないくらいだ。

それくらい、これにかけているんだよ。」



「ぬしは願望をかなえたいと強く思った、それでわしが来た。それだけの話じゃ」







「もしかして。あなたは縁結びの神様ですか?」



「正座などして、急に改まったな。

手を握るな! そうじゃな、ぬしらが縁結びの総本山的に呼んでおる、その神社のつながりではあるぞ」



なんてこった、そんな神様に俺はもしかして、失礼なことをしまくっていたのかもしれない。



「これは、大変失礼致しました」



「土下座などせずともよいわ。だいいち、わしは神ではない。その神社につながる眷属のようなものじゃから」



「なんだ、神様じゃないのか。使い魔みたいなもの?」



「・・・・その変わり身の速さはなんじゃ。まったく」



「俺のポテチ食ってるような奴が神とは思えんからなぁ。霊格の低い存在なんじゃないかと思っていたよ」



「霊格?ぬしのような奴がそんな言葉を良く言えたものじゃな」



「霊格は願望を叶えるには重要なポイントだろう?霊能者が言ってたぜ」



「神社に勝手に順位付けておるのは人間たちじゃ。みな同じじゃ基本的には」



「だって、お願いの叶う神社とそうでないのあるだろう?」



「神社の成り立ちによるな。呪い系、鎮魂系は願いが叶い安いじゃろうけど」



「なんで?」



「人の念を集めやすいからじゃ。願望を持った念があつまると、それが力をもって現実世界の出来ごとに影響を与えるほどになるからじゃ」



「そういう神社もいくつか御札買ったさ。でも今日はそれ叶わなかったじゃないか」



「ぬしの目的は、なんじゃった?」



俺はそこにあった、願望実現のフォトフレームを指差して言った



「この写真みたいに、彼女とお付き合いすることだよ」



「かなったではないか」



「どこが。って、お前ポテチ3袋全部食ったな!」



「うむ、この九州醤油味、というのは美味いものじゃな。今度また買うて来い」



「それなら金くれよ。って、

それよりもどこが俺の願いかなったんだよ」



「ほれ、お付き合いはしてくれると言ったじゃろ?」



「言ってない」



「良く思いだしてみろ、お買いものにお付き合いしてくれる、と返事してくれたじゃないかや」



確かに、確かに、彼女は「お買いものに付き合う」つもりでOKと言ったのだったが



「俺は、お付き合いがしたいの。彼氏彼女の関係になって、イチャイチャして、チュッチュして。あわよくばエロエロなことがしたい!」



「なんともストレートな願望じゃな。エロエロな事、というのはこのパソコンで見ておった内容のことか?

しかし、これはかなりマニアな内容じゃのう。ぬしのエロエロなことというのは」



「なっ、勝手にパソコン動かすなよ!

それに、なんで、それを知っている。っていうか、なんで俺の見ているとこ知っているんだ!」



「そりゃ当たり前じゃ。わしはこのテーブルにおるのじゃから。主がこれを見ながらナニをどうこうしておるかも見ておるぞ」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・全部?」



「そうじゃ」



「・・・・・・・あんなページや、こんなページ見て、あの・・・、健全な男子の行う、必然的な行動も?」



「もちろんじゃ」



「うっわぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ」



「そこで叫んで頭抱えても、過去は変えられぬぞ」

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<その2>



俺は、高校に入学してすぐに、彼女と劇的な出会いをした。



運命だった。



俺が中学の友人とふざけてカバンを振り回していると、自転車に乗ってそばを通りかかった彼女の長い髪の毛にカバンの金具が引っかかって。

彼女が自転車から転げ落ちるという、類稀な現象が起こった。



倒れた彼女に駆け寄る級友。そして、引き起こされて困ったような笑顔で答える彼女。

白い太ももが短めのスカートからこぼれ。



そう、俺はその太ももにしばし目を奪われてしまった。



そのあと、その級友連中からあらゆる言葉で罵倒されたが、彼女は笑顔でその級友たちをなだめてくれて。



「ごめんなさいね。私もうっかりしてたから、気にしないで」

と言って笑顔を向けてくれた。





運命だ。





俺のハートは一瞬で囚われた。

俺のハートが16ビートを刻み始める。



この出会いは、何か見えない運命に仕組まれたことではないのか。

12,000年前からの、アトランティスの過去世からの縁か?

それとも、これが噂に聞くツインソウルとの出会いなのか?



俺はそれから、その子のことを調べ始めた。

その執拗な調べ方に、友人が次第に距離を置いていったくらい。俺はその子のことを調べ続けた。



小学生の時の同級生。中学の時の同級生、そして、学校のデータベース。

学校の裏掲示板、すべてをチェックした。



そして、余計に俺は山江のことが好きになった。

このハートのビートを抑えることができない。



それからは彼女とお付き合いするために努力を始めた。

ネットで女子の攻略を見て、知恵袋に投稿して、知識をせっせと集め続けていったのだ。

そんなある日、恋愛のハウツー本を買いに出かけた本屋で、

なんとなく見かけた一冊の本



「幸運を呼ぶ引き寄せの法則」



というもの

パラパラと何げに読むと、それは素晴らしい本だった。

願望は願えば叶う。



どんなゲスな願いでも、高尚な想いでも、

それが本当なら、なんて素晴らしいのだろうか!



それから、その手の本を買いあさって今に至る。



次第に霊能者とかスピリチュアルとかパワースポットとかそういう方向にもいったが、願望を実現させるためには必要なプロセスであった。

俺の良く相談に行く霊能者は、そのたびにいつも素敵な願望実現グッズを紹介してくれるし。こないだは30万の壺を紹介してくれたが、さすがにデカくて部屋におけない感じだったので今回は購入を断念したが。次回は小さいものも用意してくれるらしい。

見かけは長髪にメガネにヒゲ、ととてつもなくアヤシイのだが、俺の相談に親身になってくれるありがたい人だ。





そして、待ちに待った、俺のバイオグラフの最高点、四柱推命、タロットカード、朝のテレビの血液型占い、星座占い、全てにおいて自分の恋愛運が最高の日がやってきた。



それが今日だ。



「幸運を呼ぶ引き寄せの法則」



運命の本にであってかれこれ半年は過ぎてしまったが。

最高の日を割り出すのにそれくらい時間がかかったのだ。





その半年の努力の成果が、

今、目の前で、ついに実を結んだのだ。





よし、

心でガッツポーズを付ける俺。視界が涙で歪む。

夕日って、こんなに眩しかったんだ。

世界って、こんなに美しかったんだ。





そんなふうに、自分の世界に入っていると、目の前の 山江 かな、は俺に微笑みながら



「それで、どちらまで?」



と聞いてきた。



?ドチラマデ?とは?



一瞬その言葉の意味が解らなかった。あれ?



俺が思考停止していると



「え、どこか買い物に行くから、付き合ってくれって言う事じゃないんですか?」



身体停止、俺の体は笑顔らしきものを顔に張り付かせ、手は後頭部に当てたまま、心と共にそのままがっちり固定された。



「文化祭のお買い物しにいくんじゃないの?」



確かに明日からは文化祭だが。

確かに、同じクラスで同じ出し物だから、必要な買い出しはあるのだが。



俺は買い出し係りじゃない。



どうやら、俺の意図は完全に伝わっていないらしい。

というのが分かった。



俺の目の前で、微笑みながら佇む山江かな。



俺は、自分の今までの努力が、まったく報われてないことに、今、気がついた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



その場をごまかして、学校から去ったあとはどうやって家まで帰ってきたのかは良く覚えてなかった。



泣きながら家に駆け込む。



カバンには「想い合う同士がラブラブになれる」という南の島から取り寄せた人形が不気味な顔で微笑んでいる。よく見ると全く可愛くもなく、死んだような目が俺を見つめている。

「くっそ〜、なんだよ!」



それを怒りにまかせて、カバンから引きちぎって部屋の中に投げ込んでやろうと部屋を開けると、



そこに何かが居た。



両親は仕事で長期出張中なので家に居ない。

そこにいるのは身内ではない。

兄弟もいないのだから。

家の鍵は確か掛かっていたのを確認している。



これは?



「泥棒か!」



手に持った不気味な笑みを浮かべた人形をつい剣をつかむように構える。

学校の選択授業では剣道を選んでいるだけなので、咄嗟に取れる構えがこれくらいしかない、というだけなのだが。

こんな不気味な人形で叩いたところでダメージは与えられないと気づいて、カバンに持ちかえる。



目の前にいるそいつは、お菓子を食べながら俺のMacで動画を見てはゲラゲラ笑っている。

俺が部屋に入ってきたことすら気づいていない。



白い髪に猫耳のようなものを頭につけている中学生くらいの女の子。



服装は和装なのだが、アニメに出てきそうな、いかにも「妖怪系」な感じ。



そんなコスプレ少女が俺の部屋にはいってきて、なんでMac80年代のドタバタお笑い番組を見ているのか。



画面の中では金のたらいがハゲ頭のかつらをかぶった人物の上に落ちてくるシーンが流れている。



俺の今がそんな感じだよ。



画面にむかってつぶやいて、俺がぼうぜんと佇んでいると、

そのケモ耳少女は俺に気づいたようで、くるっと振り向いて。

大きな目で俺を見て。

そして、手に持ったお菓子の袋を見て。



「これはわしのじゃ。やらぬぞ」



と言う。

泥棒じゃないみたいだが。



「お前だれ?」

「お、俺と付き合ってくれないかな?」

 

夕日が校舎を赤く染めていく。

夏も過ぎて秋の日差しはあっという間に落ちていく。

校舎の影は長く校庭に広がる黄昏の時間。

オレンジの光のなかで佇む二人の男女。

 

完全に、シチュエーションは自分の願ったとおり、完璧だ。

 

目の前にいる少女は、キョトンとした顔をして俺をじっと見ていた。

そして、すぐに笑顔になって

 

「ええ、分かりました。いいですよ」

 

その声を聞いて、俺は今までの自分の努力が脳内を駆け巡った。

 

そう、俺は、この瞬間を得るために。今まで、たくさんの努力をやってきた。

 

世の中にある「引き寄せの法則」「幸福になれる法則」なんていうものは片っ端から読んで。

本には付箋を張り付けすぎて厚さが倍になってしまってたものもある。

 

何度も読み返し。トイレ中、授業の合間、学校から帰る途中の電車の中。

いつもその手の本を読んでいた。

そして、その内容を自分なりにまとめたオリジナルノートは数十冊。

このノートを読めば、全ての引き寄せの法則パターンが理解できる。そんじょそこらの引き寄せ本など足元にも呼ばぬ最強の「引き寄せパーフェクトノートブック」。

 

さらに、引き寄せを実現するために、イメージを膨らませるためのコラージュを自分で作ったり。

ネットで画像を拾ってきては、自分の願望が実現した様子を再現するためのコラージュをひたすら作り続けた。

 

豪華なホテルの前に佇む俺。

 

リゾートホテルのプールサイドに佇む俺。

 

真っ赤なフェラーリから降りる俺。

 

自分の部屋には「俺の願望」をわかりやすく、見える形にしたコラージュがいたるところに貼り付け、壁も天井もコラージュだらけ。

 

幸運のグッズ、というのも買い集めた。

 

札束のお風呂に美女と入れるらしい(雑誌の写真では)、という水晶の彫り物。

ギャンブルが強くなって、スポーツカーに美女と乗れるようになるらしい神秘の石、ラピスラズリ。

 

運の良くなる置物も家には多数配置した。

 

貔貅とか、龍とか、シーサーとか想像上のいきものは揃えるのは当たり前。

お金が帰ってくる、幸せが帰ってくる、という意味も込めてカエルのリアルな置物とか、

中国では白菜を財のシンボルとしている、と聞けば手彫りの水晶白菜を家に置き。

やはり現物も必要だろうと部屋に白菜を並べて配置したこともあった。

 

そのおかげで、しばらくは白菜料理で日々を過ごしたりもした。

 

風水の本も買って、十二支を家の各方角に配置もしていた。

水晶で作られたもの、虎目石で作られたもの。お金を呼ぶ黄色水晶で作られたレアものもある。それらを方角に一分の間違いもなく配置して。

 

家の中心線を割り出し、そこには黄色い置物、そして方角を調べて、そこにシトリンやアメジストなどのクラスターを配置。

 

ご利益のある神社の御札はとりあえず神棚に揃えて。休日は神社巡り。

伊勢神宮から通販で取り寄せた神棚が自慢。

配置は部屋のなかで一番「場がいい」と霊能者に言われた場所に置いて。

そこには天井までの厚さに御札が山と積まれてたりする。

 

布団も財運を呼ぶようにと、金色の掛け布団。カーテンも、絨毯も金色。

ゴールデンなイメージの部屋がそこに広がる。

 

コラージュ用に買ったマッキントッシュが乗っている木のテーブルは、由緒正しい神社の遷宮用に用意されている霊山より切り出した、と言われている檜で作られたものだという。

 

値段はそれなりにしたけど、なんか未知のエナジーが充満してそうで。

コラージュ作るときも檜の良い香りでリラックスもできていい感じだった。

以前、神棚を置くときに呼んだ霊能者が「このちゃぶ台はいいものですよ」と勧めてくれたので、その場でローンで購入。

確かに、霊能者の言うように、なんかありそうな気配が漂っていている。

 

気がする。

 

あらゆる願望実現法を体現したこの部屋。

 

願望実現マイルーム。

 

その中に、虹色の光を跳ね返し、輝くような水晶のフォトフレームに入った写真が一枚。

このフォトフレームも、その霊能者のところから購入した、なにやら八角形をしている、願いを叶えるフォトフレームだという代物だ。

 

その中心にあるのは、ひとりの女の子。

 

それは学校一の美少女。

 

山江 かな。

 

そう、それは、俺の一目惚れの彼女だった。

 

俺の作ったコラージュには、必ずこの子が居るのだ。

 

豪邸のとなりでドレスに身を包む彼女。

リゾートホテルで水着の彼女

フェラーリの助手席の彼女。

 

そして、このフォトフレームに入って居る写真は、校門で俺と並んで立っている姿。

 

もちろん、これもコラージュだが。

実際、この顔写真も学校の広報に載っていたのをスキャンで取り込んで、PCにソフトを使って切り取っているので、微妙に画像が荒いのではあるが問題ない。

ちゃんとお絵かきソフトで加工すれば気にならないから。

 

さすがのMacである。画像処理は素晴らしいものがあるものだ。

まるで本当にこういう風景があったようではないか。

 

 

いや、この風景は、これから現実のものとなるのだ。

 

であるのだが。

何か、微妙に 山江 かな の笑顔に違和感を感じてしまった。

 

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