一話はこちらから  http://negaama.blog.jp/archives/cat_89315.html



<その2>



俺は、高校に入学してすぐに、彼女と劇的な出会いをした。



運命だった。



俺が中学の友人とふざけてカバンを振り回していると、自転車に乗ってそばを通りかかった彼女の長い髪の毛にカバンの金具が引っかかって。

彼女が自転車から転げ落ちるという、類稀な現象が起こった。



倒れた彼女に駆け寄る級友。そして、引き起こされて困ったような笑顔で答える彼女。

白い太ももが短めのスカートからこぼれ。



そう、俺はその太ももにしばし目を奪われてしまった。



そのあと、その級友連中からあらゆる言葉で罵倒されたが、彼女は笑顔でその級友たちをなだめてくれて。



「ごめんなさいね。私もうっかりしてたから、気にしないで」

と言って笑顔を向けてくれた。





運命だ。





俺のハートは一瞬で囚われた。

俺のハートが16ビートを刻み始める。



この出会いは、何か見えない運命に仕組まれたことではないのか。

12,000年前からの、アトランティスの過去世からの縁か?

それとも、これが噂に聞くツインソウルとの出会いなのか?



俺はそれから、その子のことを調べ始めた。

その執拗な調べ方に、友人が次第に距離を置いていったくらい。俺はその子のことを調べ続けた。



小学生の時の同級生。中学の時の同級生、そして、学校のデータベース。

学校の裏掲示板、すべてをチェックした。



そして、余計に俺は山江のことが好きになった。

このハートのビートを抑えることができない。



それからは彼女とお付き合いするために努力を始めた。

ネットで女子の攻略を見て、知恵袋に投稿して、知識をせっせと集め続けていったのだ。

そんなある日、恋愛のハウツー本を買いに出かけた本屋で、

なんとなく見かけた一冊の本



「幸運を呼ぶ引き寄せの法則」



というもの

パラパラと何げに読むと、それは素晴らしい本だった。

願望は願えば叶う。



どんなゲスな願いでも、高尚な想いでも、

それが本当なら、なんて素晴らしいのだろうか!



それから、その手の本を買いあさって今に至る。



次第に霊能者とかスピリチュアルとかパワースポットとかそういう方向にもいったが、願望を実現させるためには必要なプロセスであった。

俺の良く相談に行く霊能者は、そのたびにいつも素敵な願望実現グッズを紹介してくれるし。こないだは30万の壺を紹介してくれたが、さすがにデカくて部屋におけない感じだったので今回は購入を断念したが。次回は小さいものも用意してくれるらしい。

見かけは長髪にメガネにヒゲ、ととてつもなくアヤシイのだが、俺の相談に親身になってくれるありがたい人だ。





そして、待ちに待った、俺のバイオグラフの最高点、四柱推命、タロットカード、朝のテレビの血液型占い、星座占い、全てにおいて自分の恋愛運が最高の日がやってきた。



それが今日だ。



「幸運を呼ぶ引き寄せの法則」



運命の本にであってかれこれ半年は過ぎてしまったが。

最高の日を割り出すのにそれくらい時間がかかったのだ。





その半年の努力の成果が、

今、目の前で、ついに実を結んだのだ。





よし、

心でガッツポーズを付ける俺。視界が涙で歪む。

夕日って、こんなに眩しかったんだ。

世界って、こんなに美しかったんだ。





そんなふうに、自分の世界に入っていると、目の前の 山江 かな、は俺に微笑みながら



「それで、どちらまで?」



と聞いてきた。



?ドチラマデ?とは?



一瞬その言葉の意味が解らなかった。あれ?



俺が思考停止していると



「え、どこか買い物に行くから、付き合ってくれって言う事じゃないんですか?」



身体停止、俺の体は笑顔らしきものを顔に張り付かせ、手は後頭部に当てたまま、心と共にそのままがっちり固定された。



「文化祭のお買い物しにいくんじゃないの?」



確かに明日からは文化祭だが。

確かに、同じクラスで同じ出し物だから、必要な買い出しはあるのだが。



俺は買い出し係りじゃない。



どうやら、俺の意図は完全に伝わっていないらしい。

というのが分かった。



俺の目の前で、微笑みながら佇む山江かな。



俺は、自分の今までの努力が、まったく報われてないことに、今、気がついた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



その場をごまかして、学校から去ったあとはどうやって家まで帰ってきたのかは良く覚えてなかった。



泣きながら家に駆け込む。



カバンには「想い合う同士がラブラブになれる」という南の島から取り寄せた人形が不気味な顔で微笑んでいる。よく見ると全く可愛くもなく、死んだような目が俺を見つめている。

「くっそ〜、なんだよ!」



それを怒りにまかせて、カバンから引きちぎって部屋の中に投げ込んでやろうと部屋を開けると、



そこに何かが居た。



両親は仕事で長期出張中なので家に居ない。

そこにいるのは身内ではない。

兄弟もいないのだから。

家の鍵は確か掛かっていたのを確認している。



これは?



「泥棒か!」



手に持った不気味な笑みを浮かべた人形をつい剣をつかむように構える。

学校の選択授業では剣道を選んでいるだけなので、咄嗟に取れる構えがこれくらいしかない、というだけなのだが。

こんな不気味な人形で叩いたところでダメージは与えられないと気づいて、カバンに持ちかえる。



目の前にいるそいつは、お菓子を食べながら俺のMacで動画を見てはゲラゲラ笑っている。

俺が部屋に入ってきたことすら気づいていない。



白い髪に猫耳のようなものを頭につけている中学生くらいの女の子。



服装は和装なのだが、アニメに出てきそうな、いかにも「妖怪系」な感じ。



そんなコスプレ少女が俺の部屋にはいってきて、なんでMac80年代のドタバタお笑い番組を見ているのか。



画面の中では金のたらいがハゲ頭のかつらをかぶった人物の上に落ちてくるシーンが流れている。



俺の今がそんな感じだよ。



画面にむかってつぶやいて、俺がぼうぜんと佇んでいると、

そのケモ耳少女は俺に気づいたようで、くるっと振り向いて。

大きな目で俺を見て。

そして、手に持ったお菓子の袋を見て。



「これはわしのじゃ。やらぬぞ」



と言う。

泥棒じゃないみたいだが。



「お前だれ?」